徒歩目線 - Wakae Fukui 2/30
●えと、どうしたらいいんだっけ
このあたりの鹿は、母から「鹿せんべいを買う観光客を見かけたら、すぐに駆け寄って何度もおじぎし、内角からえぐるようにして奪い取るべし」と教育されている。
この子は独り立ちしてからまだ日が浅く、母の教えを実践できずにとまどっている様子。
(2009/7 東大寺)
徒歩目線 - Wakae Fukui 3/30
●くさむら+幸福+タクシー
行き先はおまかせしますと伝えて、くったりとシートに身をゆだねてみたいタクシー。
もちろん、黄色と緑色だけで構成された幸福な世界へと連れて行かれるのだ。
二男もリュックを背負って、出発の準備はもうできている。
(2007/8 阿蘇)
徒歩目線 - Wakae Fukui 4/30
●くー くー くー すー
遊び疲れて帰りの車内。
三連符になっているのは三つ子で、もう一人は彼らのいとこ。
身体は夏の日のチョコみたいにとろけて、4人は半ばくっつきかけている。
同じ夢を見てるのだろうな、なんて思わせといて、実は全然違うっていう方がきっとすてき。
(2007/8 阿蘇)
徒歩目線 - Wakae Fukui 5/30
●水筒幼稚園の園児たち
暑いねえ
ご主人どこ行っちゃったのかなー
あたし今日は氷入りよ
ボクだってキンキンに冷たい麦茶を詰めてもらってるんだ
あつつ
(2009/8 京都)
徒歩目線 - Wakae Fukui 6/30
●朝イチの「コレなんぞ?」
まだ見ぬ♀に向かってアピールすべく、腹腔をふるわせて力強く鳴き続けるアブラゼミ太郎。
しかしその声を聞いていたのは猫2匹のみ。しかも運悪く両方とも♂。
アブラゼミ太郎のテノールは、むなしく夏空に吸い込まれていくのであった。
(2007/9 自宅)
徒歩目線 - Wakae Fukui 7/30
●絶叫猿
大町山岳博物館2階には北アルプスの動物たちの剥製が展示されている。しかしこのユルい雰囲気にだまされてはいけない。どの剥製も、一癖あるツワモノぞろいなのだ。ニホンカモシカがヒザを折って座っている剥製の横を何気なく通り過ぎようとした時、台座のすみに小さく記載されているタイトルが目に入る。そこにはこう書かれている。
「ニホンカモシカ(座っての噛みかえし)」
1階のリアル山小屋と山親父の剥製(違います)も必見。
(2010/5 信濃大町)
徒歩目線 - Wakae Fukui 8/30
●どすこい金魚
百貨店のおもちゃ売り場にいた、たいへんめでたいカラーリングの遊具。更にド派手にするために赤ランプの冠も載せてテープで止めてある。チャームポイントのつぶらすぎる瞳にほだされてお金を投入すると、どすどすどすと鈍く動く。
でもこの口だけは納得しかねる。金魚ではなくヒヨコの嘴の形かと。ピヨピヨ。
(2008/2 北京)
徒歩目線 - Wakae Fukui 9/30
●猫はーい
ワゴンの下ですっかり熟睡。
「はいっ、質問であります!A4のコピー用紙500枚が5束だと全部で何枚でありますかっ」
猫の名前は、ななん。おとなしくて頭の良い子なのです。
(2008/3 自宅)
徒歩目線 - Wakae Fukui 10/30
●くるしゅうない、どこへなりと行くがよいぞ
上の子の塾かばんに潜む子猫。じゃ行ってくる、と肩にかけたところで密航は事前に発覚し、むなしくつまみ出されるのであった。あーこのまま模試に連れて行こかなー、と息子。
猫の名前はロー。漫画「ワンピース」のトラファルガー・ローから命名。
(2010/11 自宅)
徒歩目線 - Wakae Fukui 11/30
●兵馬俑3号坑
テレビなどで紹介されるのは巨大な1号坑ですが、こちらは隣にある小さめの3号坑。首と身体とを早く合体させてやりたい。こわごわと首の穴をのぞき込むと、この世ならざるものが見えそう。
(2008/2 西安)
徒歩目線 - Wakae Fukui 12/30
●「ブルゴーニュ公の家令 フィリップ・ポー(1428ー1493年)の墓」
有力者の横臥像付きの墓碑を肩に乗せて静かに運ぶ黒マント集団。黒マントの正体は泣男だが、すでに死んでしまった老婆たちがフィリップ・ポーをあの世にいざなっているようで、悲しみというよりは、ものすごく濃い空虚感に包まれている。音を付けるとしたら「ぞぞぞぞぞぞぞぞ」。広い建物の中でここだけあきらかに異空間。
守り動物はこの時代、わりとポピュラーだったようで、他の墓碑の横臥像の足下にも羊や鹿などがちょこんと置かれて主人を守っている。
(2009/12 ルーブル美術館)
徒歩目線 - Wakae Fukui 13/30
●その名はキボリ
木彫りのお土産屋さんの店頭につながれていたワンコは愛想が良くて控えめで、そりゃもうかわいいキボリくん。そうなんです。右上の白いプレートには「名前はキボリです」とのたいへんストレートな名前のお知らせが。
(2009/5 中尊寺)
徒歩目線 - Wakae Fukui 14/30
●食べるものと食べられるもの
エレファントフィッシュという名物の魚の唐揚げ(なぜかお皿に立てて盛りつけてある)の昼食を食べた後、トイレの裏で出会った2匹。犬とネズミ。大きいのと小さいの。片方は生きていてもう片方は死んでいる。いくら違いを数えても、両者の決定的な差というものは感じられない。もちろんそれを撮ってる自分もふくめてだ。
(2011/2 メコン川の小島)
徒歩目線 - Wakae Fukui 15/30
●人待ち顔
自転車の買い物カゴに入るにはちと制限重量オーバー気味な柴犬くん。でも、そのむっくりした体つきと装備した各アイテムから飼い主さんのかわいがりっぷりがよくわかる。観光客(私)が近寄ってなでても、伏し目がちでされるがままのおとなしい子だ。どうぞ元気で。
おもたい色の空から雨がぽつぽつと降ってきたのでちょっと心配。早くご主人が戻るといいね。
(2011/4 高千穂峡)
徒歩目線 - Wakae Fukui 16/30
●きけん。ここより中には入らないでね
確かに、編み笠かぶってひょうたんを持った左隅のおじさんは危険なかおりがするよね。目がいっちゃってるし、なんたって股間に重大な問題が発生してるし。ここは無謀に踏み込まず、来た道をおとなしく引き返すのが吉とみた。
(2008/5 静岡のホテル敷地内)
徒歩目線 - Wakae Fukui 17/30
●帰れない光の国の人
雨が降っていて肌寒い冬の日。
いつもの休日なら子どもたちがわーっと駆け寄ってきて、シャッターを切る音が途切れることはなかとが、今日はダメやね。早よ店仕舞いして一杯飲みに行きたかー。まだ昼前とか信じられーん。
(2009/2 熊本)
徒歩目線 - Wakae Fukui 18/30
●あーもしもし、オレオレ、オレだってば
うおぉい、兄ぃの電話はいつもスゲエなあ。俺も早くあの技術を身につけなきゃな。
ここの動物たちは人間以上に人間っぽく、右の鹿の兄さんなどはあきらかに裏街道を歩く住民の顔であります。蹴りも強そう。けっして目を合わせてはいけません。
(2009/3 シンガポール)
徒歩目線 - Wakae Fukui 19/30
●はいっ、見事に立っております!
かつて、これほどまでに色っぽくない人魚がいただろうか。人魚に抱く甘美な憧れを容赦なく粉砕する破壊力。しかも、よりによってこのポーズを選んで作った理由がわからない。
(2009/3 シンガポール)
徒歩目線 - Wakae Fukui 20/30
●よしよし、もう泣くんじゃない
ドラマを予感させる齧歯類の彫像。ふたりがこれからどのような運命をたどるのか、足下の雑草だけが知っている。
歩けども歩けどもこの奇妙な世界が展開され続けるのが、タイガーバームの胡文虎と胡文豹の兄弟が作り上げた、ここ「ハウパーヴィラ」。
日差しも思想も共にアツ過ぎるのでペットボトルを忘れずに。
(2009/3 シンガポール)
徒歩目線 - Wakae Fukui 21/30
●屋根の星条旗模様は大根と苺とブルーベリーとじゃがいも、白菜にレタス。壁は長ねぎ
お祭りの神さまの乗り物にふさわしい、見ていると心が浮き立つような野菜山車。
オレゴン州に移住した日本人農家の人々が、自分たちが栽培してようやく実った野菜類を使って山車を作り現地のフェスティバルに参加したという、そのレプリカ。これを引いてパレードに繰り出す移民たちは、きっとほほがうっすら桜色に上気していたであろう。
(2010/10 横浜の海外移住資料館)
徒歩目線 - Wakae Fukui 22/30
●子ワニのご挨拶
アンコールワットにほど近いワニ園にて。
高さ20センチほどのこの子たちは卵から孵ってそう日はたっていないと思われるが、すでにこの世にはいない。思わず合掌したくなるが、先に子ワニたちから合掌されてしまう。スタッフの若い女の子が、1匹の腹を、取っ手をにぎるような感じで持って「ほらね、柔らかく作ってあるからお土産で持ち帰っても壊れないよ」と言うかのように、むぎゅむぎゅぎゅっとにぎりつぶして力強くアピールして見せてくれた。1匹約1,200円也。
(2011/2 カンボジアのシェムリアップ)
徒歩目線 - Wakae Fukui 23/30
●職人魂
鹿児島に伝わる水烏賊漁に使われた木製の海老型擬似餌。目立たぬように、水烏賊が安心して食いつけるようにと心を砕いて、季節と時間によってこんなにバリエーションを作る、というか、止められても作ってしまう職人さんの気持ちはよくわかる。ホントは一種類でも賄えるのかもしれないと思ったことは内緒だ。丸く見えるのは銅銭で、これを挟み込んで重さを調節するという小技にも胸がふるえる。
博物館の生みの親と言われる田中芳男コレクションのひとつ。蝋で作った繊細な四季の草花なども必見。
(2010/2 伊勢の神宮農業館)
徒歩目線 - Wakae Fukui 24/30
●固い決意
金閣寺は1950年に放火により全焼した苦い歴史を持っているが、見よ、この、白抜きの文字も誇らしげにずらりと並ぶ消火器たち。どんな小さな煙も見逃さず、我等全力でかかる構えでござる。
(2010/11 金閣寺)
徒歩目線 - Wakae Fukui 25/30
●薬草ステンドグラス
初代校長は星新一のお父さん。四方の採光窓からは薬草ごしに薄曇りの日でもひかりがふわっと差し込んで、ホールを明るく照らしてくれる。
外の薬用植物園の小さな簡易温室には机が6コ並んでいてその上に紙束が不揃いに置かれ、「レポート返却中」の紙が貼られていた。
(2010/7 星薬科大学)
徒歩目線 - Wakae Fukui 26/30
●ダムウェイター
2階の食堂室横に設置されている食事用の小型昇降機。上の階から運ばれてきた料理の皿をここで受け取り、食堂に配膳した。食堂といっても重々しい赤いカーテンが下がり、こっくりした革張りの椅子に顔が写るほどに磨かれたテーブルと、晩餐会が始まりそうなインテリアなのだが、ダムウェイターの方も負けてはいない。実用的でありながらずっしりどしりと周囲を圧する重厚感で、素うどんなど、とうてい中に入れ難い雰囲気。時計や横の水場の軽やかさが良いアクセントに。
なお、ダムウェイター(しゃべれない給仕係)という言葉は差別語なので今は使わないんだそう。
(2010/11 明治生命館)
徒歩目線 - Wakae Fukui 27/30
●エレベーターの操作盤
エレベーター内部ではなく、廊下の壁に取り付けてあるもの。こういった実用面だけに特化したアイテムにも心魅かれる。右の3つの大きなダイヤルに浮き彫りになっていてそれぞれ好きな方を向いている矢印などにも、ぐっとくる。
明治生命館は、土日に無料で見学可能。天井、壁、照明、窓、窓枠、家具、取手、どれも近代建築の最高峰の名にふさわしい作りなので、ぜひカメラ片手にお散歩がてらどうぞ。
(2010/11 明治生命館)
徒歩目線 - Wakae Fukui 28/30
●窓からの半円の光
美しくくり貫かれた窓とその装飾は、この建物のこの場所だけのためにデザインされ発注された。縦に並ぶ細い棒も、スクエアなものとフリル状のものとが交互に並んでいてなんとも言えないリズム感がある。窓はちゃんと開くようになっていて、鍵の部分などもため息モノ。なつかしがるだけではイカンとわかってはいるのだが。
(2010/11 明治生命館)
徒歩目線 - Wakae Fukui 29/30
●夜の遊園地
日本の遊園地も好きだが、外国の遊園地も大好きだ。どちらとも楽しく遊んでナンボの世界ではあるが、雰囲気はかなり違っていてそこがおもしろい。ここはたくさんの家族連れが、思い思いにビニールシートを敷いて夕食を食べていたり遊具を楽しんだりしているすぐ脇を、普通に車やバイクがブイブイ通りすぎていくという非常にデンジャラスな遊園地である。このあふれる手作り感を見て欲しい。キャンデイ色の大量の光と、その光にカモフラージュされた夜の暗闇。このままどこかに連れ去られたい。
(2011/2 カンボジアのシェムリアップ)